書斎のマタタビ

「本」についての様々なことを記事にします。

読みたい新刊3選 10月後半

日本書籍出版協会が発行する無料配布物「これから出る本」から注目の新刊を3冊選んで紹介します。読書生活の参考にしていただけたら幸いです。

 

種村季弘の眼 迷宮の美術家たち』

先日のミルキィ・イソベさんのブックデザインについてのブログ記事でも、少し紹介しました展覧会「種村季弘の眼 迷宮の美術家たち」の図録。
澁澤龍彦由良君美と並ぶ博覧強記の文学者、種村季弘の美術批評活動の全貌を振り返る内容となっています。
展覧会企画者による編纂で、間村俊一さんの装丁が当然のように秀逸です。
土井典野中ユリなど多くの素晴らしい作品が収められていて、それだけでも充分に価値があるのですが、展覧会会場にあった稲垣足穂瀧口修造武田百合子らの直筆手紙が掲載されていないのが残念!

種村季弘の眼 迷宮の美術家たち

出版社:平凡社

発売日:2014/09/12

ISBN:978-4-582-20677-7

種村季弘の眼 迷宮の美術家たち
種村季弘の眼 迷宮の美術家たち

 

『アジア再興 植民地主義に挑んだアジアの志士たち』

2冊目はちょっと堅めの内容。世界中から注目されているインド出身のエッセイスト、パンカジ・ミシュラが19世紀末から20世紀にかけて活躍したアジアの知識人の姿を綴っています。
主役となるのは、ジャマールッディーン・アフガーニーと梁啓超(リアン・チーチャオ)。あまり耳馴染みのない2人ですが、アフガーニーはスンニ派やシーア派などの宗派を超え協力することで、ヨーロッパの帝国主義に対抗する必要を訴えた人で、その後のイスラームに大きな影響を与えました。日本へ亡命していた梁啓超も同じく帝国主義に立ち向かった偉大な思想家で、また当時の中国の因習たる纏足からの女性解放を主張したことでも知られています。

 トルコのアタテュルクや孫文ガンジーなどの改革の源泉となる思想を知るとともに、現代のアジア情勢を考えるうえでも重要な一冊になりそうです。

アジア再興 植民地主義に挑んだアジアの志士たち

出版社:白水社

発売日:2014/10/20

ISBN:978-4-560-08395-6

 

『作家のごちそう帖 悪食・鯨飲・甘食・粗食(平凡社新書)』

最後は少し軽めに新書を選びました。日本文学における食文化について論じられた『名作の食卓』(角川書店)などで知られる大本泉さんの新刊。
「文学と食」という流行りのテーマではありますが、単なるリスティングではない、読み物としてしっかり楽しめるのはこの著者ならでは。岡本かの子のフランスでのグルメ事情や、向田邦子によるレシピなども掲載されています。
なかでも希代の博物学者、南方熊楠の章では1ヶ月の日記の中に餡パンを食べた記述が8回も見られたり、人見知りゆえの深酒のエピソードが紹介され、面白おかしく読めてしまいます。

作家のごちそう帖 悪食・鯨飲・甘食・粗食

出版社:平凡社

発売日:2014/09/12

ISBN:978-4-582-85749-8

作家のごちそう帖 悪食・鯨飲・甘食・粗食
作家のごちそう帖 悪食・鯨飲・甘食・粗食